垂渓庵です。
幸枝若さんと言っても浪曲のコアあファン以外はほとんど知らないんじゃないか。初代の京山幸枝若さんは一世を風靡した浪曲師さんだし、当代の幸枝若さんは、初代幸枝若さんの実子で、初代の芸を受け継ぐ浪曲親友協会会長だ。
私は当代の幸枝若さんの芸は実際に見たことがあるけれど、先代は実際に見たことがない。CDや映像を通して知るだけである。が、とても達者だ。
私が聞いたCDの数は約30枚。これが多いのか少ないのか実はよく分からない。何しろ、カセットの時代も含めて幸枝若さんの音源がどれぐらいあるのやらよく分からないからだ。が、浪曲が流行っていた頃ならともかく、今の人間にしてみたら多い方ではないかと思う。というか、そもそも30枚近くのアルバムを聴いたアーティストのアルバムはそんなにない。ジャズのチャールズ・ミンガス、ローランド・カーク、アート・ファーマーぐらいのもんじゃないか。いや、ファーマーはそんなに聴いていないか。
閑話休題。先代の幸枝若さんは、会津の小鉄シリーズ、左甚五郎シリーズをはじめとして、古い外題の作品を演っておられた。「玉砕硫黄島」のような現代物もないではないけれど。河内音頭や江州音頭のCDも複数ある。そんな中で私のお気に入りは、会津の小鉄シリーズでは「花嫁仁義」か「血煙稲荷山」、左甚五郎シリーズでは「竹の水仙」、シリーズでない演目では「武蔵屋新造」河内音頭では「森の石松」だ。
「花嫁仁義」では、小鉄の兄弟分の坊さんが面白い。「血煙稲荷山」では助っ人の登場が胸がすく。「竹の水仙」はお話の完成度が高いように思う。「武蔵屋新造」は新造の啖呵が面白い。二人の曲師による三味線も面白い。「森の石松」は石松のいまわの際の口説きが哀切でいい。
と言っても比較の問題で、幸枝若さんの浪曲や音頭はとても聴きやすいし、バラシと言われる全体の終盤部分での節回しの高揚感が何とも言えず心地よい。
浪曲や音頭はCD自体があまりないけれど、比較的手に入りやすいものもあるので、機会があったら手にとってほしいと思う。
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