コーヒーに入れる粉乳みたいなのに「ニド」というのがあったと思うが、最近見かけない。というのが今回の主題ではない。
旗本退屈男という古い小説がある。確か昭和初年に発表された作品だと思う。わたしぐらいの年代の者には、市川右太衛門が主演した映画のテレビ放映あたりでおなじみなのではないか。
小説の方を最近読み終えた。なんか徳川の権威によりかかりすぎていないかという気がしないでもないけれど、悪党を懲らしめる様がけっこう痛快だったりする。時間つぶしにはちょうどいい作品だと言えるだろう。
さて、その退屈男早乙女主水之介、性格も豪快ならしゃべり方も豪快だ。こんな感じだ。
「ウフフ、そうかそうか。偉いぞ! 偉いぞ! まだほんの小娘じゃろうと存じていたが、いつのまにか偉う出世を致したな。いや天晴れじゃ天晴れじゃ」(第一話)
「そこじゃそこじゃ。人と人の争いは武器でもない。技ばかりでもない。智恵ぞよ、智恵ぞよ」(第二話)
「わははは、神易の示すところなりとは、おやじ、大きいぞ! 大きいぞ!」(第四話)
「わははは、わははは。やりおるな。なかなか活潑じゃ。活潑じゃ。いや勇ましいぞ、勇ましいぞ」(第六話)適当に目についたところを抜き出してみた。主水之介は感興が湧くとどうやら同じ言葉を二度繰り返すようだ。いかにも天真爛漫といった趣だけれど、なんだかこの殿様、頭が悪いんじゃないかという気がしないでもない。昭和初期の小説では、豪快系の登場人物はこんなしゃべり方をするものだったのだろうか。それとも作者佐々木味津三の癖なのか。ゆるゆると調べてみよう。
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