安倍首相は五輪招致の際、「健康に対する問題はない。今までも、現在も、これからもない」と言ったそうだ。「問題はない」という発言は、明確に嘘ではないかと思われる。とても微量とは言いかねる放射性物質がまき散らされたのだ。爆発の実際はこんなものだった。もちろんこれは核爆発ではない。が、放射性物質をまき散らさなかったわけではない。
ここ数日、原田正純さんの本を何冊か読み返した。『水俣病』(岩波新書)に、次のような文章が引用されていた。
許容量というのは、無害な量ではなく、どんなに少ない量でもそれなりに有害なのだが、どこまで有害さを我慢するかの量、すなわち有害か無害か、危険か安全かの境界として、科学的に決定される量ではなく、社会的な概念であること。害が証明されないというが、現実にそういうことをやってみて、そうなるかどうかがはじめて証明されるというのでは、科学の無能を意味し、降灰放射能の害が証明されるのは人類が滅びるときであり、人体実験の思想にほかならないこと。放射能が無害であることが証明できない限り、核実験は行うべきでないというのが正しい考えである。原水爆実験が行われていた頃の文章だ。安倍首相が言いたれた言葉と比べてみるといい。首相のことばはあまりにも不誠実ではないか。福島第一原発の事故のすさまじさのほんの一端でも理解している人なら、「健康に対する問題はない」なんて、とても恥ずかしくて言えないはずだ。一国の首相ともあろう人がそこまで不誠実であるはずがないから、おそらく彼は福島第一原発の事故がどのようなものなのかを、ほとんど理解していなかったのだろう。菅直人さんにレクチャーを頼めばよいのではないか。
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