今回は本来なら「図書館開館祝詞」の本文を紹介するはずだったけれど、前回のエントリーを投稿してから、毎日新聞電子版に今回のタイトルを冠した記事があることを知った。22日付けの記事である。
いったいどうしてそんなことになるのか。学校の怪談? 都市伝説? そんなものが新聞でとりあげられたりしないだろう。記事にするのは「恐怖新聞」ぐらいのものだ。
殺人事件や不審死が重なった? 名探偵○ナンや金○一少年が過労死で倒れるに違いない。何か出るのか? 妖怪ウ○ッチじゃあるまいし。じゃあなんだ。
何はともあれ、記事の一部を引用してみる。
大阪の府立高校の約2割にあたる24校の図書館が、昼休みや放課後などに生徒が利用できない「開かず」の状態にあり、府監査委員が改善を求めるこ とが分かった。近く監査結果を公表する。2009年に行政改革で専任の学校司書が廃止され、業務を割り振られた教職員の手が回らないのが理由。府教委は司 書の代わりに全教職員が協力して図書館業務をカバーするため、各校に運営組織の設置を指示したが、約4分の1にあたる34校で未設置となっている。
2009年に行われた行政改革…。みなさん、学校図書館で何が起こったか、なんとなく想像がついたんじゃないか。記事の先の方を見てみよう。
財政難による人員削減の余波が司書業務にまで及んだことが分かる。府教委は従来、学校司書を実習助手として採用。生徒の読書活動の支援のほか、貸し出しや選書、蔵書管理などに従事してきた。しかし、橋下徹知事 (現大阪市長)が就任直後の09年、財政難による人員削減の一環から、図書館専任の実習助手の廃止を決定、理科や家庭科に配置転換した。一方で、司書教諭 の資格を持った教員の配置を推進したが、担当教科の授業と兼任になるため、図書館業務に割ける時間が限られるのが実情という。
たぶん、前府知事的には、司書教諭の資格を持つ教員の数と司書業務に割ける時間数を掛け合わせれば、司書の業務がまかなえるじゃん、と考えたのだろう。で、無駄は省け! となったわけだ。
しかし、世の中そんなにうまくはいかない。司書教諭の資格を持つ教員の授業の時間割をうまく調整すればいいんじゃないかと思うかも知れないが、非常勤の先生の時間割や各クラスの時間割のバランス、特別教室の使用状況、全体の会議や教科の会議、校務分掌の会議の割り当て……などなどなどなどを考えていくと、なかなかお望みどおりの時間割は組めないだろう。
わたしは短縮授業の時間割を組んだ経験があるけれど、レギュラーの時間割にくらべて、遥かに容易な条件になるにもかかわらず、苦労させられた。
仮にうまく時間割が組めたとしても、司書業務を兼任する教員も授業の予習をしなければいけない。プリントの作製もあるし、小テストをすれば、当然採点する必要もある。司書を兼任する人が進路関係の仕事をしていたら、大学関係、予備校関係、出版社関係、びっくりするぐらい来客がある。
また、昼休みに図書館を開けるとして、司書を兼任する教員の時間割が、どうしても前後に授業が入る形になるとしたらどうする。昼ご飯を食べなくてもいいとお思いか?
と、さまざまな要因を考えれば、計算上は司書教諭がいなくてもやっていける! だから無駄を省け!! と言っても、理屈どおりにならないこともあるのは、すぐに予想がつくことだ。それでもやれというのは、単純というか、現場を知らないというか、残念な管理職の発想だということになるだろう。
もちろん、あくまでも改革を実行に移すべし! という断固たる姿勢が必要なこともある。それによって大阪府の行政がより効率化した部分もあるし。
けれど、全体の二割の図書館が「開かずの図書館」になるというのは、ちょとよろしくない。学力低下を何とかしたいのなら、力の入れどころを間違えてはいけないのではないかと思うのである。
わたしには、前大阪府知事よりも祝詞で図書館の開館を寿ごうとした阪井正卿さんの方が、まともに思える。
0 件のコメント:
コメントを投稿