垂渓庵です。
また好きなアルバムを一枚挙げてみよう。ジャズベーシストのチャーリー・ヘイデン(CHARLIE HADEN)のリーダーアルバム、『ドリーム・キーパー(DREAM KEEPER)』だ。
ヘイデンはいくつかのアルバムをシリーズ化して制作している。たとえば、QUARTET WEST。固定した四人組で、映画音楽などをインサートしつつ、とてもおしゃれでアコースティックな演奏を繰り広げるシリーズだ。MONTREAL TAPEという、モントリオールで録音した一連のセッションもある。他にもトリオやデュオなど、固定したメンバーでいくつかアルバムをリリースしているはずだ。
そんなチャーリー・ヘイデンの編成するビッグバンドが、LIBERATION MUSIC ORCEHSTRAだ。このバンドは、1969年、1983年、1990年、2005年の都合4度しか編成されていない。とてもスペシャルなバンドだ。今回紹介する「DREAM KEEPER」は、1990年に再結成された際に作られたアルバムだ。
このバンドは、再結成までの期間の長さから、ある程度のメンバーの入れ替えはあるが、追求するサウンドは比較的一定している。力強さと哀愁とを漂わせるブラスがとても印象的な音作りをしている。
それ以上に一定しているのは、どのアルバムも自由や平等を抑圧する体制に対する何らかの抗議、あるいは態度表明をする姿勢が顕著なことだ。ひと言で言うなら、とても政治的なアルバムということになろうか。
もちろん、わたしもいくらなんでもそんな姿勢を有しているというだけで、こりゃあいいとは思わない。聴いていて心地よいというのがまずある。しかし、わたしがこのアルバムを好むのは、どうもそれだけではないような気がする。
上記の活動期間を見てもらうと分かるように、LMOの活動期間は40年近くにわたる。ヘイデンは実に20代そうそうから70歳に手が届く頃まで一貫して抑圧的な体制にNOと言い続けてきたのだ。これはとても感動的なことではないだろうか。
ドリーム・キーパーに収められている「Rabo De Nube」──とても美しい曲で、とても美しい演奏だと思う──を聴くとき、わたしは同時に2005年までのヘイデンの歩みを思い出す。その結果、曲そのものが引き起こす以上の心の動きを感じるのだと思う。
ところで、わたしのある友人は学生時代に、LMOが演奏するNHKの人形劇「紅孔雀」の主題歌を聴きたい、と言っていた。そのときはピンとこなかったけれど、その後、なるほどと思うようになった。時々は頭の中でLMO版「とべとべ はばたけ 紅孔雀」のメロディが流れたりするくらいだ。
ヘイデンももう70歳を超えてるし、さすがにLMOの再結成は難しいだろうけれど、もしもかなうならば聴いてみたい。当然その際の抗議の対象は、日本の原発行政やそれを取り巻く方々──本当は「奴ら」とか「連中」とかもっと露骨に「鬼畜」とか言いたいのだけれど、わたしの育ちがそんな品のない言い方を許さない──だ。実現すればきっと聴きながら泣いてしまうことだろうな。
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