2012年6月11日月曜日

旧暦4/22 査察官の憂鬱(完全版)

垂渓庵です。

先週金曜にアップしてしまった未完成版の完全バージョンです。すまぬすまぬ。

メビウスという作品に気づき、最終話近くの視聴をしていた時に気になったことがある。それは、トリピーことトリヤマ補佐官が「彼は私のかけがえのない部下だ!」と名啖呵を切った相手、メビウス引き渡しを要求する、政府のシキ査察官に関することだ。


48話の中頃で、メビウス=ヒビノミライであることを知った政府は、エンペラ星人によるミライ引き渡しの要求を受け入れようというのか、重体の彼の身柄を確保すべくシキ査察官をGUYSに送り込んでくる。

一見すると、シキ査察官はどちらかというと冷徹で、GUYSやメビウスと距離を置いているような印象を与える。GUYSの面々やミライに対して、一貫して非情に徹しているかのような印象なのだ。が、はたして本当にそうなのか。査察官役の斎藤洋介さんの芝居を見ていると、その点がとても気になるのである。

これまでミライとともに戦ってきたサコミズ総監は、テレビでの声明で、エンペラ星人に屈することなく戦うことを呼びかける。このシーンは田中実さんの屈指の名シーンだと思うが、それはともかく、総監室を出て行こうとする彼に、シキ査察官は「総監」と声をかける。

それに対するサコミズの答えは、「大丈夫です。私は逃げません」だ。この答えを受けてシキはおもむろにサコミズを見る。

この一連の流れを見ていると、「総監」のトーンが微妙にそれまでと異なっていることに気づく。言外にサコミズの声明への共感を表しているように思えて仕方がない。そうでなければ、「総監」は、もっと違うトーンになっていたはずだ。また、サコミズの「私は逃げません」に対する振り返り方も、共感する自分の気持ちからすると予想外の返答への反応のように思える。このあたりの査察官は終始うつむき加減で、自分の役回りに対する懐疑に満ちあふれているようだ。

もう少し後の場面で、エンペラ星人へのミライ引き渡しを拒否するという政府の決定を電話で知らされる際の顔が優しげになるのも、そういう読み取りを裏付けるのではないか。口角の微妙な動きに注目してみよう。ほとんど笑いを浮かべる一歩手前に変化していく。いや、画面からははっきりとは分からないのだけれど、政府の決定の中身を告げるためにGUYSのメンバーを振り向く査察官の顔は、笑い顔に移行していっているようにも思える。

過剰な読み取りなのかもしれないと思いつつ、斉藤さんの絶妙の役作りなのではないかという思いが捨てきれない。みなさんはどうお思いだろうか。と言われても、映像を見ることのできない方は困ってしまうだろうけれど。が、わたしは、内心は望まぬ役回りを冷徹な表情の元に遂行しようとしていた査察官の内面の変化を、斎藤さんが極めて抑制的に、しかしみごとに表現したと思いたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿