2012年6月26日火曜日

旧暦5/7 伊藤博文の英語力

垂渓庵です。

さて、先日大隈重信の乳母車姿を今日に伝えてくれる金子堅太郎の話を紹介した。

今日は、同じく金子堅太郎の伝える、伊藤博文の英語力についての逸話を紹介しよう。やはり、『戊辰物語』からの引用だ。はたして伊藤の英語の実力は如何。

以下本文。

伊藤公は維新当時の志士の間には、博識第一のハイカラであった。英語を話すのも珍しがられた。ある時、英国公使が条約改正のことで公と折衝したことがある。公は英語で何かめちゃめちゃにしゃべり出した。そして、しきりにユーロピアン・パウエルと怒鳴っておる。公使はけげんな顔をして「も一度」を繰り返す。そうする中に公使は「そうか、貴官のいう意味は European powers(欧米列強)」だろう」というや、公は「そうだ、そのパワーだ、パウエルなどとついオランダ語が出たのでね」といっていた。得意の英語というものは実は度胸英語であった。(金子子談)

以上本文。『戊辰物語』97ページから引用した。

ウィキペディアによれば、伊藤は維新後、「長州閥の有力者として、また英語に堪能な事を買われて参与、外国事務局判事(中略)など明治政府の様々な要職を歴任」したとあるので、上のエピソードは、その折のものだろう。英国公使と話していることから、話題となっているのは「日英修好通商条約」だと思われる。

「度胸英語」というのは、たぶん不十分な語彙と文法を気合いで補う方法(方法か?)を指しているのだと思う。わたしがロンドンパリで試みたやり方だな。確かにこの方法でも何とか用の足りることが多い。けれど、話の内容によっては不向きな方法だ。条約改正などという外交上の交渉ごとにはいちばん向かないのではなかろうか。駆け引きや日常語彙と異なる語彙などが必要になるのだろうし。

もしも金子の言うように伊藤の英語が「度胸英語」だったのなら、ウィキペディアの「英語に堪能な事を買われて」というのは、周りの物の買いかぶりだったということになるのだろうか。どうもはっきりしないところもあるが、伊藤がらみの交渉ごとといえば、こんな映像もある。大河ドラマ「花神」の一場面だ。大丈夫か伊藤博文。完全にテンパっている。

もっとも、当時の世相を考えると、これでも伊藤は立派なものだったと言えるだろう。尾藤さんの芝居を見る限り、「度胸」はなさそうだけれど。伊藤の英語力に関してはこんな記事もある。彼の名誉のために付け加えておこう。

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