2013年5月23日木曜日

旧暦4/14 キャラコさんの弱点

垂渓庵です。

以前、久生十蘭の『キャラコさん』シリーズを読んでいると書いたと思う。書いたよね。

そのキャラコさん、いい人なのだが、時にそれはいかがなものですかという反応をすることがある。

何作目だったかで、キャラコさんは、いとこの元彼女でもある高校の元同級生にある頼み事をされる。キャラコさんにとっては、いや、たいていの人には不愉快な頼み事だ。

その不愉快な頼み事をする元同級生ってのは、いけすかない野郎──いや、女郎だ。演劇にかぶれてやたらに高尚ぶってる女だ。別に演劇にかぶれても悪かないけれど、それだけで自分は高尚だと勘違いするなんざ、およそろくでもないやつだ。

今の世の中なら何だろう。英語がしゃべれますって乙にすましているタイプかな。英語がしゃべれようが、教養のかけらもなく中身が薄っぺらなやつは、決して高尚でも何でもない。けれどもそこらへんの機微が理解できないバカは世の中にたんといる。うちの英語科にも(以下自粛)。

いかぬいかぬ。キャラコさんの話だった。キャラコさんは、お高くとまった従兄弟の元彼女から、従兄弟の部屋に忍び込んで、自分が書いた手紙を全部取ってくるように頼まれるのだ。なんでそんなバカなことをこんなやつに言われなきゃならないんだ、キャラコさんは当然怒る。

が、怒るのだけれど、その怒りの向かう先がどうも変だ。キャラコさんは、相手の言いようがあまりにも腹が立つので、憤然と手紙を取り返すことに同意するのだ。あ、あかんやろ。ここは怒って拒絶すべきところやがな。

キャラコさん、どうも憤然と相手に対することができないのではないかと思われる。これは、キャラコさんの美質というよりも、一種の弱点になってしまうのではないか。

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