2013年5月6日月曜日

旧暦3/27 小隅黎さんの『北極シティーの反乱』

垂渓庵です。

小隅黎さんというSF作家がいた。またの名を柴野拓美さん。いや、正確には柴野拓美さんのまたの名が小隅黎か。『宇宙塵』の主催にして日本SFファンダムの父で、多くの後進を育てた方だった。小隅黎名義で作品を発表したり翻訳もなさっていた。

さて、その小隅さんに『北極シティーの反乱』というジュブナイルSFがある。コールドスリープによって未来にやってきた少年、カズオ・ナガイが未来世界の危機を前に活躍する佳品だ。わたしは徳間文庫で読んだと思う。

この作品には、カズオ・ナガイの淡い恋心、未来の世界の生活ぶりなどなど、作品世界を生き生きと感じさせる要素がたくさんある。また、作品全体の構成とも関わる人間とロボットの意識にまつまる技術、未来世界における人間性の問題など、考えさせる要素も備わっている。

中学生ぐらいでこの作品に触れたなら、きっと抵抗もなく作品世界に入り込めるのではないかと思う。長さもそんなに長くないし、そういう意味では中学生に薦める本として最適なのではないかと思うけれど、今では出版されていない。日本の出版文化はどういうことになっているのか、などという大層な話ではなく、単純に残念だ。

さて、小隅さん、この作品を作るに当たって念頭に置いた作品があるんじゃないかという気がする。そのへんについては、また次に書いてみたい。

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