垂渓庵です。
この表題だけで浅茅陽子を思い浮かべることの出来た人は、無駄にテレビで貴重な時間を消費してきた人だ。
先日、京都の人達の日常生活における京言葉の機能を論じた文章で問題演習をした。あたりまえのことだけれど、前もって問題を解き、どんな風に解説をしていくか考えていた。予習というやつである。
予習をする際に、いつもいつもその問題に集中しているかというと、実はそうでもない。あらぬことを考えたりすることもある。今回もそうだった。
京言葉を武器に、京都人は他の人と渡り合う、というような内容だったので、当然のことながら、それに当てはまるような事例を半ば無意識に探したりしながら問題を解いていた。解説の際に使えるかもしれないからだ。そのうちに、なんか東京かどこかから女の人が京都にやってきて、古い商家に嫁ぐというドラマがあったよな、という記憶が蘇ってきた。
もちろん、最近のドラマではない。ずいぶん昔に見たものだ。題名や登場人物はなかなか思い起こせない。何を商っていたかも忘却の彼方だ。しばらく考え込んで、夜の九時、十時頃にやっていたドラマだったよな、というようなことをやっと思い出した。
さらに考えることしばし。商家に嫁ぐことになる女の人が、いくつか品物を見せられて、好きな物を一つどうぞ、と言われていたシーンが何となく頭に浮かんできた。何かのお礼だったと思う。
その中から一番地味なものだったかを選んだところ、実はそれが一番値段の張るもので、それを選んだことで、商家の女主人か誰かのお眼鏡にかない、息子の嫁になることになったのではなかったか。どういう展開だ。
面白いもので、そこまで思い浮かぶと、次々と記憶の断片が浮かび上がってきた。中条きよしが息子役だったよな、とか、オープニングの映像で何本もの糸を組み合わせて何か作っていたよな、ああそうだ組紐だ、商家は組紐屋だった、とか、ずるずると思い起こせた。
今はインターネットの時代だ。「京都 組紐 ドラマ」あたりのキーワードで検索すればすぐ見つかるだろうと思ったが、これらのことばでは、必殺シリーズが上位に来る。わたしの思っているドラマはなかなか出てこない。中条きよしを加えても同様だ。彼も必殺のメンバーだ。キーワードを変えたりしてしばらく検索を続けて、やっとのことで「おくどはん」というドラマ名が判明した。ちょっと大変だったけれど、ネットがなければドラマ名は思い出せなかったに違いない。いい時代になったものだ。
ところで、「おくどはん」は、1977年に放映されたようだ。今を去ること四十年近く前。せいぜい二十年ぐらい前のドラマだろうと思っていたので少し驚いた。四十年前というと、わたしは高校生にもなっちゃいない。そんな時期にこの地味なドラマを見ていたとは…。
そんなこんなで、小一時間以上、問題演習の予習はストップしていた。もちろん、こんなニッチなネタはとても授業で披露することはできない。時間もないしね。というわけで、その後さらに予習をせねばならず、えらいこと時間をとってしまった。ことほどさように授業の予習は大変なのである。ちゃんちゃん。
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