垂渓庵です。
2008年3月に公開したもの。一昨年の秋ぐらいから川柳を作り出している。今から振り返ってみれば、ここに書いた薫風さんの叙勲記念川柳大会に出席したのが遠い縁となっている。薫風さんの川柳は、川柳の通念を軽々と飛び越えていると思う。今日は川柳関係の記事をアップしようと思う。全部で7本。大盤振る舞いだ。
以下本文
垂渓庵です。
風が薫るのは五月なわけですが、今は三月。暦の上では春とはいえ、まだまだ寒いです。この時期、風が薫るのを感じるにはどうすればいいでしょうか。
海外へ脱出する、薫る風の成分を分析して科学的に合成してエアコンから噴霧する、などなどの方法が考えられますが、いずれも面倒です。わたしならもっと簡単に風が薫るのを感じることが出来ます。
その方法は単純なものです。橘高薫風(きったかくんぷう)さんの川柳を読む、です。あ、ふざけるなという声が聞こえてきそうですが、ちょっと待って下さい。
残念ながら先年亡くなられましたが、橘高薫風さんは現代川柳界を代表する柳人でした。朝日新聞大阪版「朝日なにわ柳壇」の選者を二十年以上にわたって任されたと言えば、その力量が推し量れるのではないでしょうか。
薫風さんは、川柳雑誌「川柳塔」の主幹も長年務めておられました。平成十三年にはそれまでの川柳活動を称えられ、叙勲されています。その際、盛大な叙勲記念川柳大会が行われました。
実はわたしの同僚が薫風さんのお弟子さんで、その縁でわたしもノコノコと出席させていただきました。その折の薫風さんの印象は、とても飄々として洒脱な方だなというものでした。お土産として参加者全員が「橘高薫風川柳句集」を頂きました。
わたしはもともと川柳に親しむ機会がなかったのですが、せっかく戴いた薫風さんの句集を繙くうちに川柳の面白さにも目覚めるようになり、それ以後川柳に親しむようになったのです。
何はともあれ、薫風さんの句をいくつか引用してみましょう。
湖の孤独は 雲を映すのみ
睡蓮が自分の化身だとしても
雪化粧した森しかと神おわす
抽斗に転がるものが一つある
背徳や三面鏡の無数の顔
初恋に竹馬高く高くする
ジンフィーズ 美人は美徳だと思う
矢も盾もたまらぬ顔は犬もする
しんとして丈高い句から下世話に落ちるのと紙一重の句まで、深く考え込まざるを得ない句から思わず吹き出してしまいたくなるユーモアあふれる句まで、正統派の句から前衛的な句まで、全く緩急自在のことばの使いぶりです。
その同僚には、その他にも俳句や文楽、歌舞伎、芝居、演芸など興味深い世界へ誘っていただいています。それらの話もいずれ追い追い書いていくつもりです。が、今は薫風さんの話にもどりましょう。
上に述べた叙勲記念大会からしばらく経ったころ、突然「橘高薫風川柳文集」が送られてきました。装幀といい、厚みといい、「句集」とほとんど同じでしたので、最初は「句集」が送られてきたものと勘違いし、どうして二冊目が送られてきたのかわかりませんでした。
しばらくして、送られてきたのは「文集」だと気づきました。中を見ると、「川柳塔」に発表された文章などを中心にまとめられたもののようです。拾い読みし
てみると、やはり滋味掬すべきものがあります。それにしても、なぜ送られてきたのはがよくわからなかったので、翌日くだんの同僚に聞いてみました。
どうやら、叙勲記念に出席した人全てに送られたもののようでした。どちらも定価は八千円。一冊だけでも高価なお土産だあと思っていたのですが、それが二
冊。何とも豪儀なことです。叙勲記念を寿ぐ人たちへの感謝の気持ちということでしょうか。それとも、これでもっと精進しろということでしょうか。いずれに
してもかたじけなく頂戴し、さっそくお礼状をしたためました。そのお礼状に記した駄句一句。
飄々と高く低くに薫る風
わたしの薫風さんのイメージを句にしてみました。
そうそう、叙勲記念からしばらく間を置いて、「喜寿薫風」という三百句の自選句集を出版されました。「句集」は高価ですので、買ってみて下さいとは気軽に
言いにくいですが、こちらは比較的安価です。興味を抱かれた方はお読みになってみて下さい。沖積社から出版されています。
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