2012年3月17日土曜日

旧暦2/25 再掲 千葉大学准教授 一川誠先生に聞く

垂渓庵です。

これは2007年の7月に公開したもの。後の記事にも書いたように、一川誠は大学時代の友人だ。テレビだけでは分かりにくい彼の人柄が以下の質疑からなんとなく分かるんじゃないか。彼も含む他の友人達と一緒に京都や岡山に行ったのは、もう十年近く前になるだろうか。今日は3本公開予定です。

以下本文

千葉大学准教授の一川誠さんが、中学生・高校生に向けてのメッセージを一問一答の形式で寄せてくださいました。一川さんは、先日(7月14日)の「世界一受けたい授業」(日本テレビ)に登場された先生です。2005年5月の同番組にも登場しておられますから、二回目の登場ということになります。両回とも人間の時間感覚や知覚の処理についての興味深い映像や現象が紹介されていました。

その他にも2003年に日本科学未来館などで行われた「時間旅行」展‐TIME! TIME! TIME!のナビゲーターをつとめておられました。昨年暮れにはジャーナリストの池上彰さんとの共著『大人になると、なぜ1年が短くなるのか? 』(宝島社)を出版されるなど多彩な活躍をしておられる気鋭の研究者です。



何を隠そう、いや、隠すまでもないことですが、一川さんはわたしの大学の同期で、大学、大学院の何年間かを同じキャンパスで過ごしていました。そのあたりの思い出話は別の機会に譲るとして、まずは一川さんとの一問一答を御覧下さい。学生生活の過ごし方、中学や高校の頃の興味が将来とつながることがあること、専門的なことだけではなく、実は教養的なものごとも社会生活を行う上では重要になってくることなど、さまざまなことを考えさせてくれるメッセージに なっているかと思います。

とても丁寧に回答を書いてくださっているので、今回と次回の二回に分けてご紹介します。


  今の勤務先は?

昨年までは国立大学法人の工学部にいました.
とてもユニークで面白い職場でしたが,昨年,いろいろと思うところがあって別の国立大学法人の文学部に移りました.
職場が変わる前は,工学部の中での唯一の心理学者でしたが,今は大勢の心理学講座のスタッフのうちの1人という状況です.


  どんなことを研究していますか?

実験を行なって人間の心や行動の特性を調べる実験心理学という分野の研究を行っています.
「心理学」と聞くと,カウンセリングのように個々の人の心の問題に対処する臨床的学問を思い浮かべる人が多いと思いますが,実験心理学は自然科学として人間全体に共通する心の一般的特性について探求する自然科学の一分野です.
今は特に,「見る」とはどういうことか,時間や空間の感じ方,映像や音楽の印象の決まり方における規則性,うっかりミスの起こり方やその回避の方法などと いった問題について実験的に検討しています(研究の内容についてもっと詳しく知りたい方は,以下のサイトを参照してください.http: //www.psy.l.chiba-u.ac.jp/labo/vision2/).


  中学生・高校生のころはどんな生活を送っていましたか?

中学校は歩いて5分ほどのところにあったんですが,よく寝坊して遅刻していましたね.
美術部に入っていたのですが,その当時から「見る」とはどういうことかに興味を持っていました.
また,放課後は地元の剣道場に通っていましたし,週末はボーイスカウト活動に参加していたので,今から思うとけっこう忙しい中学時代だったと思います.

高校は高校は片道1時間ほどかけて大阪から京都まで電車通学していました.
遠い学校に通うとなると,かえってあまり遅刻しなくなりましたね.
自由な雰囲気の高校でしたので,時々学校を抜け出しては美術館やお寺などに行ったりしていました.


  そのころの愛読書があれば教えて下さい。

高校時代は小林秀雄の評論をよく読んでいました.
現代国語の入試によく出題されるということを聞いていたので受験対策という意識で読んでいたところもあったかもしれませんが,一人の作家が書いたものをいくつもじっくりと読んでいくというのは面白い体験でした.
評論や随筆を読むことには筆者との対話のようなところがあって,中学のころまで読んでいた小説とは違う読書の楽しみもあるのだと感じました.
また,小林秀雄ともつながりがある人物ですが,中原中也関連の本も読んでいました(自分の通っていた高校の先輩だったので,何となく興味を持って).
本人の詩集だけではなく,彼に関する評論なども,興味を感じて眼を通していました.
同じ詩や詩人について,どのような読まれ方をしているのか知るのは面白かったですし,その読み方に自分が共感できるか考えるのも楽しかったですね.
ブルーバックス程度の内容ですが,相対論などの物理学や天文学関連の本なども好きでよく読んでいました.


  大学受験の勉強はいつぐらいから始めましたか?

高校1年のころから予備校の夏期講習などに通っていました.
でも,受験勉強を本格的に始めたのは高校3年生になってからですね.
高校入学当初から大学に行くことは漠然と決めていましたが,大学で何を学ぶかなかなか決められませんでした.
物理学にも興味がありましたが,法律家になるのも良いかなと考えていました.
高校3年生になる頃に,ようやく大学では心理学か法学を勉強しようと決心し,そのころから文系の学部受験に向けた勉強を始めました.


  大学ではどんな生活を送っていましたか?

いろんな同級生,先輩達がいて、とても刺激を受けました.
特に1~2年生の時期は,いろんな人やいろんな本との付き合い,講義,サークルなどでいろんな情報を得て,それを消化しきれずに悶々としていましたね.
3年生以降は少しずつ自分のしたいことが見えてきて,4年生になる前にはもう大学院に進んで実験心理学の研究をしようと決めていました.
自分の興味のあることには熱心でしたが,先生から出された課題などは適当に済ますところがありました.
あまり真面目な学生ではなかったので,大学院に進むということについて指導の先生に相談した時には,少し困っておられたようです.
今は学生を指導する立場ですが,学生時代の自分のことを考えると,やっつけ仕事で課題を済ましてしまう学生でも冷たくはあしらえませんね.


  そのころの愛読書があれば教えて下さい。

入学してすぐに文学部の先輩に教えてもらった岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』『続・ものぐさ精神分析』には随分影響を受けましたね(実験心理学の専門家としてお薦めできる本ではありませんが).
当時,「ニュー・アカデミズム(通称ニューアカ)」の流行の収まりつつある時期でしたが,浅田彰さんの『構造と力』なども,今にして思うと,けっこう影響を受けていたんだなと思います.
ちょっとベタですが,ドストエフスキーの『悪霊』や『白痴』,『カラマーゾフの兄弟』,カミュの『シジフォスの神話』などもこの時期に読んでとても影響を受けました.
ハイデガーの『存在と時間』,デカルトの『方法序説』なども,悶々とした頭と心を整理するのにはとても役に立ってくれました.
また,学部生時代に『性の歴史』の訳本が出版されたフーコーもよく読んでいましたね(いずれも翻訳本ですが).

研究関連では,大学4年生になったころから,専門分野の英語の論文を毎週1本程度のペースで読んでいました.
研究雑誌(定期刊行物)に掲載される論文です.
中には長ったらしくて,意味がよく分からないものもあったので,けっこう苦労しました.
じっくり読むのが良い論文と,ざっと眼を通すだけの論文の見分けがつくようになったのは大学院の後期課程(いわゆる博士課程)に進んでからだったと思います.
今は自分で論文を書く機会が増えましたが,学生の読者のことも考えて,彼らが面白く読めるようなものを書ければと考えています.

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