垂渓庵です。
次の記事にも記したように、大学院生の頃、彼は反転眼鏡をかけて生活する被験者をやっていたように思う。大学の研究室に泊まり込みだったのではないか。遊びに行って眼鏡をかけさせてもらったことがある。視野がグラグラして気持ち悪かったのを覚えている。
以下本文
前回に続いて「世界一受けたい授業」でおなじみの一川誠さんへのインタビューです。
自分の進路、お子さんの進路についてあれこれ考えるきっかけになるのではないかと思います。
研究の道に入ろうと思ったきっかけは何ですか?
心理学の勉強を進めるうちに,個人にとって最も身近な事柄であるはずの心や体験について,まだいろんなことが解明されていないのだということが分かってきました.
また,専門家が書いた本や論文,大学での講義で,どうしても納得できないことがいくつもありました.
自分の納得できる答えは本の中にも先生の話の中にも期待できそうにない,自分自身ではっきりさせるしかないと思ったのが,一番重要なきっかけだったと思います.
また,研究でご飯が食べていけるかもしれない,職業として選んでも良い,と思えた最初の経験は,博士課程の1年だったか,学会で発表した時に,いろんな人から面白いと言ってもらえたことですね.
「ウケる」という体験は,研究者にとってモチベーションを上げるためにとても大事なものだと思います.
趣味は何ですか?
大学生時代,友人が演劇をやっていて,そのころから演劇鑑賞が好きになりました.
役者が舞台の上で動き出すだけで,現実とは違った世界が展開されるところなど,とてもスリリングだと思います.
シェイクスピアやチェーホフなどの古典は,同じ演し物でもどのような解釈がなされているのか,各役者の振る舞いが過去の作品の演じ方とどう違うのかを見るのもとても面白いものです.
同様に,音楽のライブの演奏を聴きに行くのも好きです.
同じ曲でも,演奏のたびにアレンジや様々な即興によっていろいろと変わってきますが,その時々の「ノリ」を追いかけて聴くというのも面白いものです.
でも,一番の趣味は研究ですね.
自分が世界で初めて何か,人類にとって意味のある事柄を発見できるかもしれないという興奮は,他ではなかなか味わえないものだと思っています.
中学生・高校生にすすめたい本がありますか?
古典と呼ばれるものをいっぱい読んでほしいと思います.
特に,世界の古典と呼ばれているものは早いうちに読んでほしいと思います.
その読書経験は,世界中のいろんな人と共有できる何かがありますし,実際に世界中のいろんな人達とのコミュニケーションに生きてくるものです.
私の場合,博士号を取った後の3年間はカナダの大学で研究員として働いていたのですが,その間,学生時代に読んでいたフーコーやドストエフスキーなどについて向こうの人達との会話で盛り上がることが多く,そうした議論の中で大事な友人が何人もできました.
こうした古典は人類に共通の財産だなと思いますし,人と人とをつなぐ役割も果たしているのだなと思います.
また,古典の戯曲などは,読むだけではなく,それが演じられているところも観てほしいと思います.
自分の頭の中で展開されていたものとはまた違ったものが見えてくると思いますし,観るたびにいろんな発見があると思います.
中学生・高校生にどんな風に毎日を送っていってほしいですか?
毎日忙しくされている中学生,高校生が多いのではないかと思います.
でも,このくらいの年代の人達がこれほどまでに忙しくしなければならなくなったのは,人間の歴史の中では新しい出来事だと思います.
たぶん,やりたいこと,やろうと思えばできることの数が増えてきたのでしょう.
ただ,やりたいこと,やろうと思えばできることが増えたとしても,1日24時間というところは変えることができません.
すべてをやろうとしても十分な時間はなかなか得られないし,やりたいことをすべてできないのが普通なんだと思います.
やりたいことの中でも優先順位をつけて,自分にとって大事なことから1つずつ片付けていってほしいと思います.
その他、中学生・高校生に言いたいことがあればどうぞ。
人間の心など研究していると,最も身近なものであるはずなのに,まだ随分と分かっていないことが多いと実感させられます.
たぶん,世の中にはまだいろんな謎,不思議があるのだと思います.
「世界なんてこんなもの」と斜に構えることなく,いろんなことについて学び,世界のいろんな新しい側面を見ようと努力して欲しいと思います.
そうした努力をしていると,いろんなことを発見できると思います.
発見があると,そこには必ずいろんな感動があります.
また,その発見を他の人に伝えることができれば,感動を他の人と共有できるかも知れません.
そうした体験を通して,学び,探求することの楽しみを知ってほしいなと思います.
以上で二回にわたった一川さんのメッセージは終わりです。みなさんはこれを読んで何を感じられたでしょうか。わたしが思ったこと、感じたことは次回に記したいと思います。
一川さん、興味深いメッセージをありがとうございました。
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