垂渓庵です。
2009年3月に公開したもの。「リヨクトポンプ」の記事から実に一年以上空いている。いかに気ままに更新を続けていたかが分かる。この「定信ったら」シリーズは、蘭学と定信に焦点を絞って記事を紹介し続けた。知的好奇心を持って西洋種の知識を吸収していたという、定信の意外な一面が分かるんじゃないかと思う。
ペンチ・イライザは、「銀河漂流バイファム」に登場するメインキャラクターの一人。
以下本文
垂渓庵です。
遠い遠いケンタウルスよりも遠いお星さま byペンチ・イライザ
じゃなかった。遠い遠い昔、松平定信の『退閑雑記』という日記に出てくるリヨクトポンプについて書きました。退閑雑記を拾い読みしていると、あのリヨクトポンプに限らず、蘭学や蘭書由来と思われる記事がいくつかあることに気がつきます。
定信というと、寛政異学の禁で幕府の官学である朱子学を称揚し、同時に処士横断の禁によって蘭学者などに抑圧的に臨んだことで知られています。そんな彼の姿と、退閑雑記に見られる舶来の文物までも知的好奇心の対象としているかのような姿とはどうもうまく重ならないような気がします。
どう考えればいいのかはまたあとで検討するとして、今回から何回かに分けて、『退閑雑記』に引用される西洋種の事物についてご紹介することにしましょう。引用は吉川弘文館の続日本随筆大成第6巻からです。読みやすくなるように表記を少しいじってあります。
○びいどろ板を切る話。p15びいどろ板をきるには、かねの曲尺(まがりがね)のごときものを火中へ入れ、赤くならんとするとき取り出だし、切るべきところへ押し当て、そのあてぬるあとへ少し水ををそそぎ侍ればたちまち切るるなり。
「退閑雑記」冒頭を飾る記事です。これは蘭学や蘭書云々というのではなく、ビイドロを加工する技術を持った人の話を伝え聞いたということなのかも知れませ
ん。定信の知的好奇心の強さを物語るエピソードと言えばいいでしょうか。しかし、私的な覚え書き的な性質を持っているらしい「退閑雑記」とはいえ、その冒
頭一発目の記事がこれだというところに、定信の西洋由来の文物へのこだわりない接し方がうかがえるように思います。
次回はもう少し長い、エレキテルに関する記事です。定信は静電気や放電による火花についてどう考えていたのでしょうか。
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